書誌情報:日本評論社,x+234頁,本体価格4,700円,2012年9月20日発行
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前著『リカードウ価格論の研究』はリカードウ『経済学および課税の原理』後半部分の「課税論諸章」(第8-18章)と「論争的諸章」(第19-32章)を対象に,スミス価格論との相違を執拗に追跡したものだった(関連エントリー「リカード研究書2冊」(その1)(その2)参照)。本書は前著で未検討だった「論争的諸章」の第24章と第26章〜第32章の8章を対象に,徹底して社会的諸規制を内蔵した「価格論」として,さらに「論争的諸章」を「断片」として読解しようとしたものだ。「理論的諸章」(第1章〜第7章)として知られる『原理』の「精錬過程」を「価格論」と「断片」から炙り出すという徹底したリカードウ内在が特徴である。
リカードウにおける当時の社会状況からどのような法則を抽出しようとしたのかを追究する点は前著と共通している。リカードウの政治経済理論にこだわり,リカードウその人の視点を再構成している。
各章に概要を記し,リカードウ通貨論にかんする諸説の検討以外の本文ではリカードウ理論の検討に徹している。ただ,20ページにおよぶ「参考文献」は著者のリカードウ理解とどのように絡むのかはみえてこない。本書の叙述にそれらを読み込まなければならないという意味ではリカードウ非専門の読者にはとても難解である。
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