1648有本章著『学問生産性の本質——日米比較——』

書誌情報:東信堂,xviii+740頁,本体価格7,800円,2022年5月25日発行

本の厚さは,OXFORD Advanced Learner's DICTIONARY [isbn:9780194314220] や,LONGMAN DICTIONARY OF CONTEMPORARY ENGLISH [isbn:9780582237506] とほぼ同じだった!
辞書並みのボリュームの本書で著者は,日本の現状を「ジャパン・シンドローム=日本症候群」 という種々の社会病理が社会を覆っているという危機意識から,研究・教育・学修からなる学問の生産性を問題にしている。著者はさらに踏み込んで日本の大学教育における徳性教育の欠如(いわゆる教養教育の形骸化)を指摘している。
「偏差値秀才を集中的に集めてきた官界に異変の赤信号が点滅しはじめたのを典型にして人材ピラミッドの質が後退し,政界,財界,官界,企業界,医学界,スポーツ界,マスコミ界など,広く各界にわたって無視できない不祥事が頻発しているのではあるまいか」(346ページ)。「悪質」と繰り返し例言しているコロナ禍最中の検事長賭け麻雀だけでなく,最近の例では政治家の旧統一教会・関連団体との蜜月も挙げられるだろう。
アメリカで展開を遂げた学生の自主性・主体性を尊重する学修モデルやポートフォリオ,ルーブリック,シラバスの開発もまだ道遠い。本書には片片なる感想を許さない,日本の大学を考えるうえで重要な指摘が各所にある。大著であるがゆえ折に触れ辞書的に読むのもありだ。