188高晃公著『魯迅の政治思想――西洋政治哲学の東漸と中国知識人――』

書誌情報:日本経済評論社,v+318+5頁,本体価格3,600円,2007年12月26日発行

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魯迅の政治思想の形成・遍歴を中心にしながらも,魯迅を含む中国知識人たちの思想的特徴を扱った力作である。文学者としては中国共産党との協調を,政治思想家としては毛沢東への支持を浮かびあがらせ,共産党による毛沢東否定は魯迅の政治思想の再検討につながる。
マルクス主義をふくむ西洋政治哲学の「東漸」という視角から,マルクス主義との対峙や奴隷史観など魯迅の思想的遍歴が十分に展開されている。政治思想を迂回した文学者魯迅の研究の蓄積に立ち,文学と政治の分水嶺の確定という問題提起と読むことができる。
革新と伝統,西洋と東洋という中国知識人たちの構図は,一国一党体制や文化大革命などの中国的体制・政治の特徴と絡まり,日本以上に複雑だ。