書誌情報:水曜社,170頁,本体価格1,600円,2010年2月10日発行
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よく知られているように,大学教員になるための教員免許国家資格はない。教職科目を履修した大学教員はいるが,教育法,教育心理学,教科教育法など教育についての履修は必修ではない(オーバードクター問題が顕在化した70年代から80年代には,大学に職がない可能性があることから,教職科目の履修を勧める教授もいらっしゃった)。評者も教職関連科目をひとつも履修していない。大学教員は「研究指導とよばれる仕事」(38ページ)をとおして,教育にかかわっていくことになる。著者も言うように,教育と研究がつながっているところに大学教員の仕事の特徴がある。
工学部とその周辺という「個別の事情に由来した個別の姿」(はじめに)を淡々と叙述し,「大学教授の生態」(同)を紹介している。自慢話や事大主義もなく,大学教授の仕事を素直に伝えている。「大学は,教育と研究を通して,次世代を担う人材を養成するとともに学問の進歩に貢献する任務を負」(11ページ)う,「昔から教えることは最大の勉強法」(32ページ),「教員にとってホームページの整備は,大切な仕事の一つ」(44ページ),役職は「追加の仕事」(82ページ),「体勢が整わなくてもともかくシュートを打て」(168ページ)など,簡潔な文章表現のなかに,箴言めいた自説が展開されていて,とてもおもしろい。
講義,研究と学生指導,研究資金,論文作成,管理運営,入学試験,学会・国際会議,査読,非常勤,著作活動,研究成果と専門知識の社会還元など,ほぼ大学教員の仕事を網羅している。
政府の高等教育政策や国立大学法人化など激変した大学環境との絡みがまったくないのは,工学分野ゆえのことだろうか。「寝食を忘れるほど研究に精を出した」(19ページ)著者ならではの,大学教員の仕事紹介と読めばいいのかもしれない。
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