425OECD編著(森利枝訳・米澤彰純解説)『日本の大学改革――OECD高等教育政策レビュー:日本――』

書誌情報:明石書店,174頁,本体価格3,200円,2009年10月26日発行

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2004年から2008年にかけておこなった24カ国調査の日本版報告書 OECD Reviews of Tertiary Education: Japan (OECD, 2009) の翻訳である。2004年は国立大学が法人化され日本のすべての大学が7年に1度受審する認証評価制度の開始年であった。報告書はこの2つの改革を大学の自律性向上への契機としてみていることに特徴がある。
高等教育政策策定にかかわる文科省の長期的方針提示と大所高所に立った戦略的計画の必要性を提言していることがまず読み取れる。貸与型奨学金の収入対応型返還方式への転換を推奨しているのが目についたが,国公立大学のさらなる統合の推進や大学毎の授業料設定のほか競争的資金による成果に基づく予算配分など高等教育への公的支出増額に条件をつけていることや日本の科学技術基本計画を追認している箇所も多い。学部・大学院レベルの国際化政策はまだ道半ばであると指摘し,ヨーロッパで進行中の高等教育機関の標準化政策である「ボローニャ・プロセス」へのオブザーバー参加を奨めている。認証評価における個別の高等教育機関での実施可能性は,アメリカを範にしたものだ。
外国からは日本の高等教育はこう見えているという文献として読まれるべき一書であろう。