書誌情報:NTT出版ライブラリー・レゾナント(062),273頁,本体価格1,800円,2010年8月19日発行
- 作者:松野 弘
- 発売日: 2010/08/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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2007年度で,前職が大学以外(「官公庁」,「民間業者」,「自営業」,「研究所等の研究員」)の大学教員の数は9,495人である。新規採用だけでみると4,232人で36.7%にあたる。もしこれら「社会人型教員」の採用がなければ,ポスドク問題も別の様相をみせることになる。「大学設置基準改正」(1985年)と「大学設置基準の大綱化」(1991年)によって社会人を大学教員に採用することを容易にしたとすれば,他方で博士を大量に生み出した高等教育政策はポスドク問題を加速させたことになる。
著者は「社会人型教員」である。その立場から大学教員の質を問題にしている。教育と研究を担う大学教員としての質保証としては十分ではないという。社会人教員であればこそ,博士号取得,研究業績および教育業績を評価基準とすべきで,教育・研究業績がなくても社会経験(職務経験)があるというだけの社会人教員は決して大学の質向上に貢献しないというわけだ。「ネオ・アカデミズム=新しい大学知性人」が著者の社会人教員に期待する像である。
「ジャーナリストや役人,企業人から大学教授に転身した,一部の社会人教授」は「学問的専門性が相対的に低」(11ページ)いという指摘は――社会人教員であるがゆえに身内に厳しいところがあるとはいえ――,博士号の取得を大学教授の資格の法的な必須要件にすべしという点で,「アカデミック型の教員」への批判とも重なっている。
社会人教員からの社会人教員の問題摘出はすくなくとも評者は初見である。大学における社会人教員の必要性を認めつつ,彼らに「ネオ・アカデミズム」の担い手を期待した書として読むことができる。
2004年度から始まった認証評価について,「第三者機関による「FD」の評価」(100ページ)とするのは誤解を招く。また,「1994年より国立大学は国立大学法人が設置する大学となったが(後略)」(177ページ)は「2004年」の記載ミスだ。
(なお,朝日新聞「教授の資質」(2010年11月27日付)で「採用基準を厳格化すべきだ」として著者のインタビューが載っていた。)
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