691櫻田大造著『大学教員 採用・人事のカラクリ』

書誌情報:中公新書クラレ(401),286頁,本体価格860円,2011年11月10日発行

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大学教員になるための秘訣・裏ワザと銘打っているが,おおむね常識的な「傾向と対策」である。採用側から見た大学教員採用人事,専攻分野による教員の需給,将来の教員市場動向がポイントだ。
「「職がない」とか「公募の倍率が高い」とか「指導教授が無能」とただ嘆いたり,「世間が悪い」などと日本社会を呪うだけでは,大学教員になる道は拓かれない」(35ページ)。大学教員市場は「衰退産業」との認識から,自分の資格・能力(「大手大学」の博士号,留学経験,英語力,柔軟な姿勢,コネと非常勤講師歴,温厚で協調性のある人柄など)を売りに,計画的な大学教員のための「就活」を勧めている。実践的処方に徹底した筆致は斜に構えたところがない。大学教員市場を聖域化せず取材とデータによって採用までのプロセスを可視化した。
大学教員目指し博士課程に進学するなら市場の特性を読め(要するに就職し易い専門を選べ)や政党系団体などに入っていたほうが有利だは評者の経験からは疑問符が付く。また近経とマル経とを「学派の特性」と押さえるのも同じく?だ。
「多様で多才なスペックを持ち,教育力があり,行政能力も備えた人材登用へと大学教員市場が移りつつある」(224ページ)との見通しは当たっている。