355天野郁夫著『大学の誕生(上)――帝国大学の時代――』

書誌情報:中公新書(2004),391頁,本体価格940円,2009年5月25日発行

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1877年わが国最初の大学として設立され,1886年帝国大学となった東京大学を中心に,日本型グランド・ゼコールを目指した専門学校の挫折,法学系私学の勃興,私立大学の成立など,官公私立高等教育機関から大学誕生を扱った浩瀚な大学成立史である。
唯一の帝国大学を設立しつつ,高等教育の機会の拡大と人材育成を私学に預けるという「巧妙とも狡猾ともいうべき」――アメとムチによる――高等教育政策の根幹が20世紀始めには出現していたことがわかる。
高等教育制度に焦点を当て,明治期以降の矛盾に満ち,試行錯誤を重ねながら制度化に向かう道程を詳述した本書は,大学の歴史物語として読み応えあるものとなっている。