1256天野郁夫著『帝国大学――近代日本のエリート育成装置――』

書誌情報:中公新書(2424),278頁,本体価格860円,2017年3月25日発行

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かつて日本には帝国大学があった。設立順に,東京,京都,東北,九州,北海道,京城台北,大阪,名古屋である。ソウルにも台北にもあり,大阪,名古屋に先立って設立されたことについては置くとしても,現在でも旧帝とか学長を総長と称したりして特別な大学である。また,学士会や対抗戦の七大戦などに及んだいる。
最初の帝国大学である東京帝国大学を「いわばキャッチアップ型・途上国型の大学」(23ページ),京都を「「教授と学修の自由」を前提都市,教育と研究の統合を目指す」(27ページ),東北・九州は文系の法文学部としての出発,北海道・大阪・名古屋の文系学部なしと時代背景とともに設立にいたる経緯を明らかにしている。
また,旧制高等学校との関連を含む予科と教養教育,予備教育,進学事情,学生生活,大正デモクラシー,官界と実業界の進路選択,講座制と大学自治,教授と学界,財政問題,戦時体制と時代変遷のなかで当面したトピックを論じ,新制度の大学に至る帝国大学の誕生と消滅(再生)を描く。
本書は本土の七校が対象だ。「独自の地位を占めていた」旧帝国大学が理系で,私立大学が文系という「国策」はこのときにできていた。