1651文部科学省編『学制150年史』

書誌情報:文部科学省,記述編・資料編1136頁,2022年9月4日公開
『学制150年史』→https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/1420041_00011.htm

文部科学省の学制150年記念事業のひとつとして刊行された。学制交付以来の150年間の教育の発展を制度の変遷を中心にまとめた官製年史である。記述編と資料編からなっている。
記述編では教育制度の発展を,近代教育制度の創始と整備(1872[明治5]年〜1916[大正5]年),教育制度の拡充(1917[大正6]年〜1945[昭和20]年),戦後の教育改革(1945[昭和20]年〜1952[昭和27]年),新教育制度の整備・充実(1952[昭和27]年〜1971[昭和46]年),変化への対応と教育改革(1971[昭和46]年〜1992[平成4]年),新時代を切り拓く人材の育成(1992[平成4]年〜2022[令和4]年)で区切り,初等教育からの教育制度や教育行財政などでまとめ,それぞれの時期に対応した学術・文化・国際交流(国際交流の項は昭和46年以降)の実態を叙述している。
記述編と資料編あわせて1136ページの大作となっている。
国立大学法人については,国家公務員法にとらわれない柔軟で弾力的な雇用形態,給与体系,勤務体系が可能になったとし,国立大学運営上の裁量が拡大したとする。また,年々減らしてきた国立大学法人運営費交付金については,「法人化前の公費投入額を踏まえ,引き続き従来の教育研究を行うために必要な経費と自己収入額を算定し交付額を決定した」(600ページ)とし,「各大学の個性に応じた取組や新たな政策課題等への対応を支援する「特別経費」の仕組みによる支援を行った「(601ページ)。そのことによって大学がどう変わったのかについての検証は残念ながらない。
記述編の最後は「国家戦略特区制度の創設」の項下で「文部科学省関係では,令和3年度現在,公立学校の管理を民間に委託することや,国際的な医療人材育成のために一校に限り医学部を新設することを可能とする特例措置,獣医師が新たに取り組むべき分野における具体的需要に対応するために一校に限り獣医学部を新設することを可能にしている」(871〜872ページ)。あの「もり・かけ・さくら」の「かけ」も官製年史にはひとことも出てくることはない。