112木下卓・清水明編著『ガリヴァー旅行記』

書誌情報:ミネルヴァ書房(シリーズもっと知りたい名作の世界(5)),viii+200+20頁,本体価格2,500円,2006年8月30日

ガリヴァー旅行記 (シリーズ もっと知りたい名作の世界)

ガリヴァー旅行記 (シリーズ もっと知りたい名作の世界)

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ダニエル・デフォーロビンソン・クルーソー』とジョナサン・スウィフトガリヴァー旅行記』を社会科学的に読むことの意味を知ったのは,大塚久雄マルクス,そして内田義彦を通じてだった。中野好夫『スウィフト考』(岩波新書,1969年,asin:B000J94CB0)と富山太佳夫『「ガリヴァー旅行記」を読む』(岩波セミナーブックス79,2000年,asin:4000042491)はスウィフトと旅行記の格好の案内書だ。
本書は作品と作家解説,当時の歴史と知の世界での位置および現代からの読解を試みた書物である。社会科学的読解に関する論評も,英文の研究書の存在に触れるも日本来航の分析もないが,英文学者たちの旅行記との格闘が偲ばれる好著である。
B5判の本を寝床で読むには大変な腕力を必要とすることにはじめて気がついた。

項目 タイトル 執筆者 所属
はしがき
I 作品概説・作家概説
Chap.1 ガリヴァー旅行記』の風刺の世界 清水 明 信州大学
Column 主な登場人物 清水 明 -
Column あらすじ 清水 明 -
Chap.2 スウィフトの顔,ガリヴァーの声――アングロ・アイリッシュとスウィフト―― 太田良子 東洋英和女学院大学
Column 18世紀の衛生事情 木下 卓 愛媛大学
II 植民地主義帝国主義表象
Chap.3 ガリヴァー旅行記』,帝国,英蘭関係 大田信良 東京学芸大学
Chap.4 ヤフーの咆哮,フウイヌムのいななき――『ガリヴァー旅行記』に見る植民地問題―― 向井秀忠 松山大学
Column 映画に翻案された『ガリヴァー旅行記 清水 明 -
III 18世紀の知の世界
Chap.5 スウィフトの科学風刺を読む 青木 剛 明治学院大学
Chap.6 驚異の装置――ラガード大研究院と思弁的学問―― 高尾謙史 大東文化大学
Chap.7 「科学嫌い」の風刺文学――『ガリヴァー旅行記』第3篇のコンテクスト―― 千葉康樹 東邦大学
Chap.8 見世物の世紀――見世物世界と『ガリヴァー旅行記』―― 木下 卓 -
Column ロイヤル・ソサエティ(王立協会) 木下 卓 -
Column 18世紀の出版状況 木下 卓 -
IV 新たな読みの地平
Chap.9 バブル・フィクション――『ガリヴァー旅行記』と「信用」―― 西山 徹 岡山商科大学
Chap.10 スウィフトの庭 本田蘭子 学術博士
Chap.11 エッセイ――現代から見れば クイスティーナ・ハーディメント,ポリー・トインビー(野崎重敦訳) (訳者)愛媛大学
Chap.12 フウイヌムと差異のない世界――『ガリヴァー旅行記』第4篇におけるエクリチュールの問題と近代批判―― 武田将明 法政大学
ガリヴァー旅行記』を知るために
- 参考文献
- ゆかりの地へのガイド
- スウィフト関連年表
図版・写真出典一覧
索引