158伊井春樹著『ゴードン・スミスの見た明治の日本――日露戦争と大和魂――』

書誌情報:角川選書(411),246頁,本体価格1,600円,2007年7月31日

ゴードン・スミスの見た明治の日本 日露戦争と大和魂 (角川選書)

ゴードン・スミスの見た明治の日本 日露戦争と大和魂 (角川選書)

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ゴードン・スミスは,大英博物館の植物採集員として,1898(明治31)年から1915(大正4)年まで17年間日本に滞在した。この間何度か帰国している。ゴードン・スミスの日記8冊と昔話集5冊は大阪青山学園に所蔵され,その一部は『ゴードン・スミスのニッポン仰天日記』(荒俣宏訳,小学館,1993年,asin:4093870489)として紹介されたことがある。
本書は,一部日記からの引用と資料を交えながら,おおくは著者の地の文に織り込んでゴードン・スミスの見た日本を再現しようとしたものだ。日本が先進帝国主義国家の仲間入りを果たそうとした日露戦争の時期を挟んでいる。ゴードン・スミスは,大和魂と武士道に日本的特性を発見してはいるが,当時の同盟国イギリスの一員としての日本びいきが発見できておもしろい。
ロシア人捕虜が厚遇されたという松山俘虜収容所――一番最初にできた俘虜収容所――の様子も記録している。才神時雄著『松山収容所――捕虜と日本人――』(中公新書,1969年,asin:B000J9FICW)はよく知られている。地元で出版された,宮脇昇著『ロシア人捕虜が歩いたマツヤマ――日露戦争下の国際交流――』(愛媛新聞社,2005年9月,ISBN:4860870387)は最新の関連図書。
司馬遼太郎を例外として,本書の時代に関係する参考文献などがほとんど反映されていないかにみえる。スミスの名を知らしめるという著者の意図は成功しているといえよう。