190青山薫著『「セックスワーカー」とは誰か――移住・性労働・人身取引の構造と経験――』

書誌情報:大月書店,382+xxx頁,本体価格3,800円,2007年12月14日発行

「セックスワーカー」とは誰か―移住・性労働・人身取引の構造と経験

「セックスワーカー」とは誰か―移住・性労働・人身取引の構造と経験

  • -

2005年の「人身取引罪」導入以降,セックスワークの「地下化」,移住労働者の「不可視化」が進んでいるという。国境を越える性取引に携わる女性たち(=セックスワーカー)は現実に存在するだけでなく,ジェンダーおよび経済格差によるグローバリゼーションとは無関係ではない。
セックスワークは自由な意志による労働なのか,それとも奴隷制の現代的あらわれとしてとらえるべきなのか。著者は,主としてタイをフィールドに,参加行動調査と22人の「元セックスワーカー」(顧客は日本人)からの聞き取りをもとに,一種の奴隷状態ともいうべき過酷な搾取と暴力と抑圧にあることを暴き,そのうえで当事者のセックスワークとしての労働の権利を承認することなしに解決はないとする。
強制されたにせよ自由意志によるにせよ,セックスワーカーが現実に存在する以上彼女たちの存在を不法でなくするためにはどうすればいいのか。排除したり,不法と切り捨てることからは何も生まれてこない。