305トニー・ジャット(森本醇訳)『ヨーロッパ戦後史』(上)(下)

書誌情報:みすず書房,(上)xii+574頁,本体価格6,000円,2008年3月19日発行;(下)iii+489+44頁,2008年8月22日発行

ヨーロッパ戦後史(上)1945-1971

ヨーロッパ戦後史(上)1945-1971

ヨーロッパ戦後史(下)1971-2005

ヨーロッパ戦後史(下)1971-2005

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トーハンは,出版から3ヵ月以上経過し著作権の利用許諾を得た医学関連の書籍・雑誌を対象に,読みたい部分だけを抜き出してインターネット上で購入できるサービスを始めた。切り売りサービスである(日経新聞2009年4月9日付)。Medical e-honの対象が医学関連雑誌・定期刊行物のようであり,興味あるテーマの論文や特集部分に限定できるから可能なのだろう。本書のようなまとまりある書物の場合,切り売りはできない。
社会主義はなぜヨーロッパに出現し,自壊したのか。共同体と国家連合というヤヌス的存在のEUは脱民族性と親民族性をもつがゆえに「代替されえない」。歴史書を貫く大きなテーマを感じる。
イラク戦争後,親イスラエルからリベラル派に転じたといわれるユダヤ系ヨーロッパ人の「浩瀚かつ芳醇な歴史叙述」(長部重康)は,2段組本文約1000ページの切り売りを拒否している。
フランス労働総同盟(CGT)がフランス電力(EDF)から売り上げの1%を吸い上げ,ユーロコミュニズムの中心フランス共産党を牛耳っていた新事実や映画作品の分析を駆使した時代分析など読みどころ満載である。