385平岩弓枝著『浮かれ黄蝶(御宿かわせみ34)』

書誌情報:文春文庫,312頁,本体価格520円,2009年9月10日

御宿かわせみ (34) 浮かれ黄蝶 (文春文庫)

御宿かわせみ (34) 浮かれ黄蝶 (文春文庫)

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単行本か文庫で読み継いでいる愛読シリーズだ。出張や小旅行の時に鞄にしのばせておく。江戸風情やさりげない歴史知識が織り込まれ,「かわせみ」を中心とした善人たちの人間模様が評者には合うようだ。
江戸には稲荷神社が多く,「伊勢屋,稲荷に犬の糞」と言われていたこと(「二人伊三郎」),石取りの具体例(「捨てられた娘」)を頭に入れる。二百取りは二百石の米が収穫できる土地を拝領し,慣例としてその六割は領民が,四割(八十石)が取り分になる。白米にすると二割方搗(つ)き減るから,六十四石,俵にすると四斗を一俵として百六十俵となる。一石を一両とすると六十四両で,使用人への支払いと家計に充当する。
さて,江戸を舞台とした「かわせみ」の最終シリーズ。東吾の軍艦操練所での仕事は相変わらずだが,どんな内容なのかは不詳だ。単行本では「新・御宿かわせみ」,「華族婦人の忘れもの」と激動の時代に入っている。こちらも江戸から東京に移動してみようと思う。