488愛媛船主(エヒメオーナー)

都留悦史「日本海運支える「愛媛船主」 生き残りかけた正念場に」(朝日新聞グローブ「ニュースの裏側」2012年1月15日・2月4日号)を読んだ(まだネットには出ていない)。「愛媛船主(エヒメオーナー)とは世界の海運業界ではギリシャや香港の海運王たちと肩を並べる知名度がある。国内外の海運大手幹部が飛行機や電車を乗り継いで愛媛船主の地元今治市にやってくるという。以前,NHKで取り上げられたことがあった。
愛媛船主は太平洋や大西洋を行き交うコンテナ船や貨物船,タンカーを何隻も所有している外航海運業者である。今治市(旧今治市34,旧波方町11,旧菊間町1,旧伯方町14)には60の事業者がおり,830隻を所有している。それらの船籍はパナマ85.5%,シンガポール5.1%,バハマ4.8%,フィリピン1.3%,リベリア1.1%,香港0.9%となる。
愛媛船主は大手海運会社に所有する船を提供し,用船料を得る(造船所,船舶部品メーカー,大手海運会社,荷主,保険会社,銀行,船員紹介会社を「船主と海運関連業界との相関図」として描いている)。記事では資産規模は大きいが上場せず家族経営であること,自己資金が少ないこと(中古船売却益を2年以内に新造船にあてれば税納入を繰り延べできるという戦後導入した海運振興策の特例制度を利用している船主が多い)を指摘し,金融危機後の荷動き停滞による船のだぶつきと折からの円高,船籍を多く登録しているパナマの発言力が強いことによって「岐路に立たされている」と結んでいる。「レジスター・ジャパン構想」による「特区」――船籍を今治にした外航船主に法人税や登録税を下げる――にも触れている。地元地銀(伊予銀行の名前が出ている)は14年連続で右肩上がり。これを支えているのが愛媛船主向けの融資だ。造船だけでなく船も多く所有する今治造船は毎週月曜日の朝に銀行の幹部を集めて会合を開いているそうだ。
人口約17万人の今治は佐藤可知和デザインのタオルやB級グルメ焼豚玉子飯もさることながら愛媛船主によって世界的な知名度を持っていたことをあらためて確認できた。