046七尾和晃著『闇市の帝王――王長徳と封印された「戦後」――』

書誌情報:草思社,246頁,本体価格1,500円,2007年1月30日

闇市の帝王―王長徳と封印された「戦後」

闇市の帝王―王長徳と封印された「戦後」

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「東京租界の帝王」と呼ばれた王長徳の生涯を描いた作品である。上海をモデルに新橋国際マーケットや学芸大学マーケットなどを手がけ,敗戦直後の日本の闇市で名をあげた。新橋・土橋には王の所有になる黄色合同会館もあったという。1970年東京都の行政代執行によってこの会館は取り壊された。この時押収された動産は一切行方がわからない。
毛沢東劉少奇周恩来魯迅などの直筆の書簡やピカソゴッホ渡辺崋山の絵などもあったという。王の人脈を垣間見せる日本人の書簡,布施辰治,亀田得治,大内兵衛美濃部亮吉吉田茂岸信介佐藤栄作などの書簡も多数含まれていた。東京アンダーグラウンド,アンダーナイト,アウトサイダーズとも重なる戦後裏面史をわれわれはもっと知っていていい。