047長谷川眞理子著『ダーウィンの足跡を訪ねて』

書誌情報:集英社新書ヴィジュアル版002V,205頁,本体価格950円,2006年8月17日

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文字通りダーウィンの出生地から永眠の場所まで写真と紹介文およびエピソードを交えた紀行記だ。著者は,ダーウィンのおもしろさを,(1)進化生物学の基礎を築き,ダーウィニズムの名を冠するほど影響が大きい,(2)演繹的な推論を積み重ねた,(3)男性中心の時代にあって雌主導の配偶者選択理論を提唱し,また奴隷制度に反対した,(4)国教会の牧師になるつもりが科学者に転向した,にまとめ,ダーウィン縁の場所を訪ねながらこれらについて触れている。
ダーウィン自然淘汰理論を考えたとき,マルサス人口論』に影響されたと言われている。本書でも,この本を読んだだけでなくマルサス本人と親密につきあっていたと指摘している。しかもマルサスダーウィンに紹介したのは,作家兼社会思想家の女性ハリエット・マーティノーであり,彼女はダーウィンの兄エラズマスの恋人だったという。
かつてこのブログでマルサスの研究書について触れ,「知性史」の試みを紹介した(https://akamac.hatenablog.com/entry/20070416/1176717078)。ここには,兄エラズマスが知的サークルである「ルナ・ソサエティ」のメンバーとして3度登場しているが,チャールズには触れられていない。チャールズの父はウェッジウッド家の娘と結婚したから,チャールズはウェッジウッド家とも繋がりがある。また,妻のエマ・ウェッジウッドはいとこにあたり,ショパンからピアノレッスンを受けていたことがある。あらためて「知性史」の広がりと可能性を感じさせられた。