書誌情報:日本経済評論社,xii+305頁,本体価格2,800円,2006年11月20日

- 作者: 飯田裕康,柳田芳伸,出雲雅志
- 出版社/メーカー: 日本経済評論社
- 発売日: 2006/11/01
- メディア: 単行本
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本書はマルサス(Thomas Robert Malthus, 1766-1834)を「知性史のなかに包括する試み」(はしがき)であり,「思想やそれをも包括する知性のトポロジーの組み直し」(同上)を企図したものである。本書で扱われているマルサスの同時代人たちは,サー・トーマス・バーナード(第1章),J. -B.セー(第2章),ジェイン・マーセット(第3章),リカードウ(第4章),シスモンディ(第5章),ジェイムズ・ミル(第6章),トゥック(第7章),ヘンリー・ブルーム(第8章),フランシス・ホーナー(第9章),サミュエル・リード(第10章),ロバート・トレンズ(第11章),J. R. マカロク(第12章)である。
知性史とは,「現場を共有した人々の知的会話や思想的交流には,既存のdisciplineに包含されえない多方向への広がりと,情報を互いに共有しあおうとする暗黙の意志とが働いている」(88ページ)として経済学だけではない多様な知の交流史を描くこと。たしかに,リカードウと自然詩・政治との関わりを論じた第4章とトレンズの政治活動を描いた第11章はこの知性史の一端を明示している。全12章のうちこの2章以外は広い意味での経済思想を論点にしたものだ。D. ウィンチ(Donald Winch)のように同時代の知的世界を横断的に分析するという問題意識を共通にしながらも,彼の仕事を超ええたかといえば疑問なしとしない。
マルサスを中心に彼の同時代人たちの知的ネットワークをひとまず解きほぐし,『人口論』や『経済学原理』だけではないマルサス思想の多面像を同時代人との関わりで再提示したことでは,間違いなく共同研究の成果といえるだろう。