書誌情報:昭和堂,viii+459頁,本体価格6,000円,2009年5月30日発行
- 作者:中村 廣治
- 発売日: 2009/05/01
- メディア: 単行本
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評者がリカードウを読んだのはマルクス『剰余価値学説史』でのリカードウ論を検討することからだった。その時に買い込んだ本の一冊に著者の最初の著作『リカァドゥ体系』(ミネルヴァ書房,1975年)があった(真実一男著『リカード経済学入門』新評論,1975年,はその名のとおり入門書として多くの読者を得た)。
かつて経済学史の研究書がそうであったように,マルクスの解釈をどこかで意識しつつこれとは異なる視点をいかに打ち出すかに苦心していたように思う。著者の一書は新しいスラッファのリカードウ理解とそれへの批判という新しい状況でのリカードウ研究の延長線に置くことができる。リカードウの穀物法批判と議会改革運動という時論的課題の明確化というリカードウ研究にリカードウの理論的研究の成果を追加する意味を持った。
さて,本書は「地金論争」や「穀物法論争」というリカードウが関わった初期の活動から主著『経済学および課税の原理』の理論内容の詳述を中心に生涯と活動をほぼ網羅している。リカードウ解釈へのいくつかの論点については禁欲的である。ひたすら著者の理解するリカードウを展開している。評伝としての血湧き肉躍る内容を期待はできないが,「率直・誠実で粘り強い」(433ページ)リカードウと同じように――著者は1931年生まれ――,執拗にリカードウの全体像を提示しようとしたといえる。
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