464根井雅弘著『市場主義のたそがれ――新自由主義の光と影――』,『入門 経済学の歴史』

書誌情報:中公新書(2008),vi+193頁,本体価格740円,2009年6月25日発行

書誌情報:ちくま新書(837),250頁,本体価格760円,2010年4月10日発行
入門 経済学の歴史 (ちくま新書)

入門 経済学の歴史 (ちくま新書)

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前著は,「市場メカニズムと政府の経済管理のあいだの絶妙なるバランスを試行錯誤で模索する以外にない」(iiiページ)とする立場からの新自由主義経済思想をフリードマンを中心としてまとめたもの,新著は,ケネーとマルクスの経済循環論から制度派経済学までの経済思想をテーマ別に概観したものである。コラムの挿入と中村隆之の補説とまったく同じ構成だ。
前著は比較的引用が多い。新自由主義経済思想をめぐる理論形成と論争を描き,アメリカ経済思想の多様さを紹介している。新著においても新自由主義と古典派の自由主義との違いを強調し,新自由主義批判の問題意識を共有している。
「第四章までは,経済学の本流をつねに意識して記述してきましたが,(中略)。彼らを全員拾うことはできませんが,(中略)。もちろん,以下に見ていくように,「制度」の意味は論者によって多様なのですが,(後略)」(新著178ページ)などのように頻出する「……が,」の文章(前著でも頻出)は,「向学心の高い読者層」(新著208-9ページ)にはおすすめできない。