書誌情報:岩波新書(1329),xx+226+4頁,本体価格800円,2011年9月21日発行

- 作者:水町 勇一郎
- 発売日: 2011/09/22
- メディア: 新書
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法学部や法学系の学生以外にとって労働法を履修する機会は少ない。社会人になって労働者の権利を知ることを通じてか,逆に人事や賃金や労働時間などの管理を通じてか,必要に迫られて学び始めるのが実態だろう。非正規雇用や有期契約の増加によって労働法の存在の意義があらためて注目されている。
労働法も法であるかぎりその国の労働観,宗教観,社会観などと深く結びついている。欧米の労働法との比較を交え,労働法の歴史と法源の概説から採用・人事・解雇,人権と法,労働条件,労使関係,労働市場,労働紛争の各論を柱に国家・個人・集団の緊張関係による労働法の未来を論じている。
労働法の個々の条文や具体的内容については省き,労働法の基本的骨組みを解説している。世界の労働法や労働法学の潮流は「「内省」を法的に取り込んで制度化」(223ページ)に向かっているという。国家と個人の間に集団という第3の主体を入れ「動態的に変化」(224ページ)する労働法は,「皆さんの手や声によって動かしたり変えたりすることができる」(「はじめに」)のだ。
労働法をはじめ法の意義を強く感じるのは学卒以後の社会においてである。労働法は当事者間の自由な意思決定を製薬する法律の役割が相対的に大きいという。労働法の根幹にこうした「強行法規」という当事者の合意の有無にかかわらず当事者を律する考え方がある。法律のなかに「人間」を見ることができそうだ。
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