377根岸隆の「経済学の樹」

(1)書誌情報:ミネルヴァ書房,vi+296頁,本体価格3,500円,2008年11月20日発行

経済学の理論と発展

経済学の理論と発展

  • 作者:根岸 隆
  • 発売日: 2008/11/01
  • メディア: 単行本
(2)書誌情報: Routledge, xviii+221 pages, 2009

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根岸の専門論文は,Collected Essays of Takashi Negishi (vol.1: General Equilibrium Theory, 1994; vol.2: History of Economics, 1994; vol.3: Economic Thought from Smith to Keynes, 2000; Cheltenham: Edward Elgar) に収めた。
(1)はその後の14論文を,「古典派の経済学――揺籃期の経済学」,「限界革命――現代経済学の先駆」,「日本の経済学――輸入から輸出へ」,「自分史――偉人たちとの対話」の4部構成にまとめたものだ。経済理論と経済学史の相関から日本における経済理論の発展に問題関心をシフトさせつつあることが構成に反映されている。
(2)は池尾愛子とHeinz D. Kurz編の根岸記念論文集である。根岸(あるいは根岸理論)に関係する10人の寄稿からなっている。日本人寄稿者は,池尾,浅田統一郎,平井俊顕,川俣雅弘,中野聡子,野口旭だ。2004年の北米経済学史学会(History of Economics Society)での年次大会における根岸生誕70年を祝う分科会が本書の出発点のようだ。巻末には池尾作成の根岸著作リストがついている。
根岸の研究領域は,古典派とマルクス新古典派一般均衡理論,オーストリア学派と広い。一般均衡理論から研究をはじめ経済学史の先行研究を繙くと,初期の根岸が発見した諸定理は「ある意味で既に古典派経済学や限界革命期の経済学において予想されていた」((1),268ページ)という。「天が下に新しきことなし」(同上)との謙遜は,「偉人たちとの対話」((1)の第4部のサブタイトル)である経済学史の魅力の一端を語っている。