045間宮陽介著『増補 ケインズとハイエク――<自由>の変容――』

書誌情報:ちくま学芸文庫,235頁,本体価格950円,2006年11月10日

増補 ケインズとハイエク―“自由”の変容 (ちくま学芸文庫)

増補 ケインズとハイエク―“自由”の変容 (ちくま学芸文庫)

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中公新書版(1989年)の増補版。ケインズハイエクの慣習論や伝統論を中心にイギリス伝統の自由主義における両者の異同を論じる。ケインズは「ケインズ主義」者ではないし,ハイエクもまた「ハイエク主義」者(自由主義者)ではない。ケインズを計画主義者として,ハイエクを市場主義者として両者を対立させてはならない。これが本書のライトモチーフだった。
今回増補された「補論 ケインズハイエク――その後」では,新自由主義の流行にも触れ,自由の中の不自由化,教育の国家化と市場化の同時進行を指摘する。ハイエクの自由論は国家と市場(公と私)に立脚する自由論であり,二分法モデルだ。容易に新自由主義と結びつきうる。中間団体(ギルド,教会,宗教団体,大学,学校,政党,家族,都市,資源の共同利用地としてのコモンズなど)の存在を認めるかという理論上の構成と中間団体の萎縮という実態上の存在とが自由主義新自由主義との境界線になる。著者の自由論は国家と市場(公と私)に属さない中間団体の自由を包括できるかどうかに見いだすことができる。