書誌情報:岩波新書(1123),iii+220+22頁,本体価格780円,2008年4月22日発行
- 作者: 本山美彦
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/04/22
- メディア: 新書
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スーザン・ストレンジの言う「構造的権力」にヒントを得たのだろうか,「金融権力」とはレーティング・エージェンシーのような「金融という構造的権力」を意味している。1970年代から始まった「金融革命」を解剖し,2007年のサブプライムローン問題で露わになったリスク・ビジネスのリスキーさを,金融技術,金融理論,金融制度,リスク・ビジネスの限界とともに執拗に追究している。
金融理論と金融制度に理論的正当性を付与したシカゴ学派やフリードマンの議論に立ち入って分析しているのも本書の魅力のひとつだ。プルードンの「相互主義」,イスラム金融,ESOP(従業員持株制度)が対抗理論になりえる可能性を論じ,金融ゲームと化している金融権力の制御を説く。
金融システムが金融権力として跋扈し,経済学の応用でもってそれを事実上神格化した理由がよくわかる。新自由主義批判の金融版として手元に置いておきたい一書である。
ゼミ生による本山美彦ブログ「消された伝統の復権」(http://blog.goo.ne.jp/motoyama_2006)は,残念ながら更新は滞っているようだ。