395佐藤洋一郎・渡邉紹裕著『塩の文明誌――人と環境をめぐる5000年――』

書誌情報:NHKブックス(1134),187頁,本体価格920円,2009年4月25日発行

塩の文明誌 人と環境をめぐる5000年 (NHKブックス)

塩の文明誌 人と環境をめぐる5000年 (NHKブックス)

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「サラリー」の語源ともなった塩は,人間の生活に不可欠な物質である。海水からはじまり人間・動物の汗・尿などとして排泄されふたたび海に戻る。人間が自然に働きかけ改造することによって人間に必要なものを取り出す行為が,塩害を生み出し,環境を破壊している。
塩水浸水や潮風による自然起源の塩害以上に問題になっている人為的塩害を,文明以前から現代まで描きだす地球環境学視点の塩論だ。塩害を軸に文明の盛衰を論じる今までにない切り口が本書の魅力といえる。日本の農地が塩害と無縁なのは安定した降水と地質時代からの土壌の特色によるものであって,地球上の例外的存在である。
生命に必要な塩が生命にかかわる塩害をもたらす。地球自然との関わり方を考えさせられた一書である。