407土屋由香著『親米日本の構築――アメリカの対日情報・教育政策と日本占領――』

書誌情報:明石書店,333頁,本体価格5,200円,2009年10月31日発行

親米日本の構築

親米日本の構築

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子ブッシュの外交戦略に大きな役割を果たした「ネオコン4人組」のひとりで,「アラビアのウォルフォウィッツ」ことポール・ウォルフォウィッツはかつて「第2次世界大戦後の日本の民主主義はその後,アジア一帯に広がっていったではないか」として,対日戦略の中東への応用を構想した。「民主主義の輸出」が成功した希有な例が日本であり,ウォルフォウィッツをして信じさせたアメリカの対日政策の特徴があらためて検討されていい。
本書は,アメリカの日本にたいする「再教育・再方向づけ」――親米民主主義へ誘導する介入主義と親米派日本人に任せる親日的不介入主義とがあった――には「情報・教育プロジェクト」があり,当時のメディアを総動員したプロパガンダがあったことを明らかにしている。とくに実際の占領政策のなかで情報・教育政策の中心を担ったのは,GHQにあった民間情報教育局(CIE:Civil Information and Education Section)であった。著者が視聴し,発見し,リスト化したCIEの映画作品は対日広報・宣伝政策による文化戦略を十分に語っている。それは一言にして,アジアにおける優等国という日本の自尊心(=他のアジア諸国への優越感)をくすぐりつつ,日米の対等な同盟を演出することが目的であった。
「人種・文化・ジェンダーにかかわる中心・周縁の権力関係が,学問的あるいは民間の「知」を構築する。構築された「知」は政策立案や国際政治に影響を与える。逆に国際政治上の力関係が人種・文化・ジェンダーに関する言説を支配する」(276ページ)。日本占領という歴史にあらわれた文化戦略をとおして,アメリカの広報・宣伝活動のもつ「文化的・人種的なヒエラルキー」(275ページ)の実相が見えてくる。