1060デイビット・スロスビー著(後藤和子・阪本崇監訳)『文化政策の経済学』

書誌情報:ミネルヴァ書房,xvi+303頁,本体価格3,500円,2014年9月10日発行

文化政策の経済学

文化政策の経済学

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前著『経済学と文化』(中谷武雄・後藤和子監訳『文化経済学入門――創造性の探究から都市再生まで――』日本経済新聞社,2002年,[isbn:9784532350055])では経済財とならんで文化的価値の独自性に注目していた。本書ではさらに経済学を文化政策の分析に応用しようというところに力点が置かれている。文化財の保存と活用や芸術支援にとどまらず文化にかかわる分野を視野に入れた文化政策全体を包括していた。
文化・芸術政策とその過程,文化産業,文化遺産,都市・地域と文化,観光,文化貿易,文化の多様性,芸術教育,経済発展と文化,知的財産,文化統計と経済学が対象としえる諸論点を網羅しつつ,文化の固有性を強調する姿勢を一貫させている。
「芸術や文化を対象とする政策は,それが経済に関わる政策形成に関連していると理解され,強く主張されない限りは,常に周辺に追いやられ,重要な仕事とはかかわりのないものとして扱われるリスクに直面している」(ivページ)。創造的芸術だけでなく,文化的な財とサービスの広がりを背景にした文化政策の多様性を見据えた政策論の提起として実践的な内容をもっている。
著者の問題関心は経済学の文化政策への応用にあり,経済学こそ政策形成・分析と文化的価値の認識に不可欠であることを終始強調している。この点では文化政策を対象にした経済学の展開としても読める。