1657池上惇著『池上四郎の都市計画——大阪市の経験を未来に——』

書誌情報:京都大学学術出版会(学術選書105),xv+217頁,本体価格1,800円,2022年8月25日発行

池上四郎(1857-1929)は,会津藩出身で会津戦争を戦い,図南藩で辛苦を体験し,後警察官僚を経て第6代大阪市長(3期10年)になる。退任後は朝鮮総督府政務総監になり,任期半ばで病没した。天王寺公園内には銅像がある(1935年建立。戦中の金属供出により撤去されたが,1959年6月に市制70周年を記念して再建された)。
著者は池上四郎の孫にあたり,大阪市長時代の業績を中心に都市計画の先見性を発掘している。池上四郎の最大の功績は,中央集権的な行政体質を是正させながら,都市社会政策を主張する学者たちを登用し,また,地域コミュニティにおける満場一致ルールの適用を実践したとしている。
著者が関心をもつ文化資本論や創造都市論にひきつけながら,池上四郎の都市計画構想,都市社会政策,社会教育論,地域コミュニティ共同事業論の再評価を試みている。