書誌情報:河出ブックス(019),217頁,本体価格1,300円,2010年8月30日発行
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大学キャンパスはその周辺市街地となんらかの関係をもって計画・整備された。本書の「大学町」への着目は近代都市計画の歴史に位置づけることにある。明治期から第二次大戦終結までの時期(とくに大正期以降)を対象にして,国立=一橋大学,大岡山=東京工業大学,上ヶ原=関西学院大学,日吉台=慶應義塾大学,東山=名古屋大学,杉本町=大阪市立大学を中心に,キャンパス地確保と都市計画とのかかわりを縦横に論じている。
土地会社,鉄道会社による郊外開発によって作られた大学町(一橋大学,東京工業大学,関西学院大学)と耕地整理,区画整理という組合施行による市街地整備(名古屋大学),さらには理想的な緑地構想と結びつく近代都市計画(大阪市立大学)という3つの類型のもとで整理した大学キャンパス論からは,国立と大岡山とが震災と復興を契機としていたように,実業家・政治家・大学人ら多くの絡みがあった。「大学町」の形成は,一橋大学の「帝都復興事業」としての性格,関学の阪急・小林による沿線開発路線とのかかわり,東工大の住宅不適地へのキャンパス転用,日吉台の商店街・駅・大学キャンパスの「明快な幾何学的構成」など「錬金術」として一側面を色濃く持っていた。
著者はそうした「錬金術」から「身のまわりにある貴重な蓄積」(「大学と地域との有形・無形のつながり」・「多くの卒業生たちと大学との絆」)への脱皮を示唆している。都市計画史・建築史,大学沿革史および都市空間論から大学の意味を考えされた一書であった。
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