1766上野正道著『ジョン・デューイーー民主主義と教育の哲学ーー』

書誌情報:岩波新書(1945),146+13頁,本体価格900円,2022年10月20日発行

コンピュータを利用した教育の実際を見聞するということで,1996年12月に,MIT,トロント大学ノースウェスタン大学,UCバークレーなどを訪問したことがある。コンピュータの利用で教育の質を向上させることができるという信念で研究していた認知科学者から聞いた先駆者としてデューイ(John Deey, 1859-1952)[とイリイチ(Ivan Illich, 1926-2002)]の名を聞くことが多かった。デューイは,実際,子どもの個性,自由,興味を重視し,課題解決やプロジェクト学習の先駆者とみなされており,当時軍事利用から民生利用に転換し始めたコンピュータはデューイ理論の応用として考えられてもいた。今日の教育のさまざまな実践の思想的な源泉はすべてデューイといっても過言ではないほど彼の影響はとてつもなく大きい。
本書は,デューイの教育哲学と実践を追い,そこから新しい学びのデザインを創造しようとの意図をもったデューイ論である。20世紀はじめにデューイによって唱えられ実践された民主主義と教育の再構成やコモン・マンの教育思想はいまなお古びていない。92年間の生涯で約40冊の著書と700本以上の論考を発表し,著作集(南イリノイ大学出版,日本では東京大学出版会)もある知の巨人・デューイをまずはこの一書から紐解けるのは嬉しい。