書誌情報:水曜社,189頁,本体価格2,500円,2013年3月30日発行
- -
阪神・淡路大震災からの復興のシンボルとして,チケットが売りきれる劇場となった兵庫県立芸術文化センターの(しかも稀有な)成功事例を核に,地域の公立劇場の歴史と現状,マーケティング,オペラ・プロデュース,観客分析を試みた文化政策論の一書だ。
芸術監督をつとめる佐渡裕の知名度だけでなく,地域のニーズにあった自主事業(定期演奏会,ワンコイン,世界音楽図鑑,オペラ)やチケットを売り切るアートマネジメント,阪神間の特定地域居住者のリピーターのように,公立劇場としての存在感が際だっている。
総計で毎年10億円を超える兵庫県からの補助(公演事業補助金,施設管理運営費,楽団人件費)があってようやく成り立ってもいる。それでも社会的便益は試算によれば約56億円を超え,また年間50万人を超える観客が地域活性化に寄与しているという。
ボーモル病ともコスト病とも称され,舞台芸術はコスト削減が難しい。あえてそこに挑戦する公立劇場としての事例としても読める。
- 関連エントリー
- 西野嘉章著『モバイルミュージアム 行動する博物館――21世紀の文化経済論――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20130130/1359555800
- 全国初の文化助成機関「アーツカウンシル東京」発足→https://akamac.hatenablog.com/entry/20121214/1355493766
- 杉本博司著『アートの起源』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20121128/1354104961
- 伊藤裕夫・松井憲太郎・小林真理編『公共劇場の10年――舞台芸術・演劇の公共性の現在と未来――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20110907/1315403952
- 大木裕子著『オーケストラの経営学』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20100524/1274713100
- 建畠晢編『ミュージアム新時代――世界の美術館長によるニュー・ビジョン――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20090513/1242224824
- 芸団協編『芸能活動の構造変化――この10年の光と影――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20071212/1197452322
- 今橋映子編著『展覧会カタログの愉しみ』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20070713/1184320430
- 1年前のエントリー
- 松本幸二 “Graphic Design Exhibition”→https://akamac.hatenablog.com/entry/20120822/1345643542
- 2年前のエントリー
- 洋泉社MOOK『データでわかる日本の未来 危ない大学――最高学府の耐えられない軽さ――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20110822/1314022951
- 3年前のエントリー
- 北山修著『最後の授業――心をみる人たちへ――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20100822/1282487522
- 4年前のエントリー
- 5年前のエントリー
- 三浦展著『下流大学が日本を滅ぼす!――ひよわな”お客様”世代の増殖――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20080822/1219398745
- 出張講義 in 弓削高校(その2)→https://akamac.hatenablog.com/entry/20080822/1219373325
- 6年前のエントリー