864垣内恵美子・林伸光編著『チケットを売り切る劇場――兵庫県立芸術文化センターの軌跡――』

書誌情報:水曜社,189頁,本体価格2,500円,2013年3月30日発行

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阪神・淡路大震災からの復興のシンボルとして,チケットが売りきれる劇場となった兵庫県立芸術文化センターの(しかも稀有な)成功事例を核に,地域の公立劇場の歴史と現状,マーケティング,オペラ・プロデュース,観客分析を試みた文化政策論の一書だ。
芸術監督をつとめる佐渡裕知名度だけでなく,地域のニーズにあった自主事業(定期演奏会,ワンコイン,世界音楽図鑑,オペラ)やチケットを売り切るアートマネジメント,阪神間の特定地域居住者のリピーターのように,公立劇場としての存在感が際だっている。
総計で毎年10億円を超える兵庫県からの補助(公演事業補助金,施設管理運営費,楽団人件費)があってようやく成り立ってもいる。それでも社会的便益は試算によれば約56億円を超え,また年間50万人を超える観客が地域活性化に寄与しているという。
ボーモル病ともコスト病とも称され,舞台芸術はコスト削減が難しい。あえてそこに挑戦する公立劇場としての事例としても読める。