627洋泉社MOOK『データでわかる日本の未来 危ない大学――最高学府の耐えられない軽さ――』

書誌情報:洋泉社,207頁,本体価格1,200円,2011年6月16日発行

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「危ない大学」を名指しするのが目的ではない。全体として今大学が危ないという意味のようだ。タイトルで釣っているわりには,入試状況から進路選択まで大学の多様な取り組みを紹介し,「消費」される大学の多面性を浮き彫りにしている。
タイトル同様,「崖っぷち大学のいま」,「潰れる大学,生き残る大学」,「全入時代の大学選び」,「データで見る全入時代の大学」の各パートを見るかぎりではひどいことになっている大学のオンパレードのようだ。表紙に刷り込まれている「この大学の教育力がすごい!」が実はこのムック本のコンセプトである。大学の地道な取り組みが発掘され紹介されている。タイトルはえぐいが内容はまともである。
「いまどきの「面倒見のいい大学」って何だ?」(山内太地)では精神科まである東京大学の保健室,大阪大学の面倒見のいい大学の最先端などとともに,愛媛大学が紹介されていた。「愛媛大学では,すべての学生に対し,学生5〜10人に1人の学生生活担当教員が4年間付き,履修指導やトラブルなどに対応する。ひきこもりがちな学生のアパートまで訪ねて行くようなこともある。1年生はライフスキルを学ぶ「心と健康」という科目が必修。新入生セミナーでは必ずグループワークを実施。ディスカッションでコミュニケーション力を高め,友達づくりをする。職員や大学院生による学生サポート室,学生支援室スタディ・ヘルプデスク,学生によるピアカフェなどの部屋が常設されており,いつでも相談できる」(71〜2ページ)。
大学は教育力で選べも(友野伸一郎),研究は高校生には響かないという誤解の指摘も(倉部史記),当たっている。