106大学論2著:(1)絹川正吉著『大学教育の思想――学士課程教育のデザイン――』,(2)寺崎昌男著『大学は歴史の思想で変わる――FD・評価・私学――』

(1)書誌情報:東信堂,x+265頁,本体価格2,800円,2006年9月10日
(2)書誌情報:東信堂,xviii+435頁,本体価格2,800円,2006年11月30日(正確には「崎」の「大」は「立」)

大学教育の思想―学士課程教育のデザイン

大学教育の思想―学士課程教育のデザイン

大学は歴史の思想で変わる―FD・評価・私学

大学は歴史の思想で変わる―FD・評価・私学

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大学を論じるポイントはいくつかあるだろうが,もっとも大事なことは大学における教育だとかねがね思っている。(1)は,学士課程(通常の4年間あるいは6年間の課程をいう。大学院課程と対にして使われる。)の教育を,リベラルアーツ,教養教育などとも表現される内容の充実を主張している。著者は,それを「学術基礎教育」(=専門科目の学習)とあらわす。専門教育を大学院にシフトさせる大学院重点化とは別なベクトルを志向し,かつ「学部教育の自由化」と呼ぶ学部の枠組みを超えたリベラルアーツ教育の主張に連なっていく。
(2)は,大学教育の質の保証にかかわる大学教員の専門性と大学職員の責任制を中心に,変わりうる可能性について論じている。その鍵を握っているのが,FD (Faculty Development) であり,SD (Staff Devlopment) だ。
(1)は教育の中味から FD へ,(2)はFD から評価システム,学位制度,大学アーカイブズ論を経て私学論へ,と大学教育論のアプローチは違うが,改革の担い手である大学人に改革のグランドデザイン=「思想」を持てと提起している。