809小田隆治・杉原真晃編著『学生主体型授業の冒険2――予測困難な時代に挑む大学教育――』

書誌情報:ナカニシヤ出版,x+289頁,本体価格3,400円,2012年11月30日発行

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大学教育改革の流れにあって,学生主体型授業が注目されている。いまでこそこの名前でいわれているが,教員の試行錯誤の結果として到達した面も無視できない。人文社会科学の定番であるゼミも,古くからある学生主体型といえなくもない。
大学の授業には講義,講読,ゼミ,フィールドワーク,実験などの形式があり,学生の主体性を引き出す工夫におのずと限界があるものもある。要卒単位の下限が設置基準で規定されており,単位をそろえるカリキュラムの制約もある。
本書も学生主体の学び実践集だが,ポイントが2つある。ひとつは,ひとつひとつの授業の全体カリキュラムにおける位置を明確にすることである。カリキュラム・マップというキーワードに集約できるだろう。もうひとつは,「明日の社会を創造する自立した市民の形成」(2ページ)である。こうした理念が個々の授業実践でどの程度意識されているかは温度差がある。それでも授業の形式や規模が違っても学生主体型の経験は貴重である。
大部分の実践例は教育GPを契機として試行されたものだ。
運動科学の講義(関西大学),900名の巨大授業「現代の教育」(立命館大学),大学生活事始め授業(山形大学),中学校英語インターンシップ東京純心女子大学),教養セミナー(山形大学),情報環境(山形大学),生涯発達心理学桜美林大学),地域学(山形大学),サイエンスコミュニケーション(山形大学),情報リテラシー三重大学),工学部コミュニケーション教育(福岡工業大学),理学療法学(藍野大学),教員養成型 PBL 教育(三重大学),社会教育特論・教育原論特講(日本教育大学),初年次数学教育大阪府立大学),アクティブ・ラーニング(筑波大学)。
評者も入っている経済教育学会は分野別教育学会としてはいち早く学生主体の教育改革に挑戦してきた学会のひとつである。分野を超えて大学における学生主体型授業がこうした本になる時代になったことに時代の変化を感じている。