書誌情報:勁草書房,x+290頁,本体価格3,900円,2012年7月25日発行
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「もし今後も大学に図書館が残るとしたら,それは,学習の場所として教室を代替するものでしかあり得ない」(「はじめに」iiiページ)。電子ジャーナルや機関リポジトリ,電子書籍などの普及によって,これまで大学図書館の主要なサービスであった資料の導入,管理,提供が副次的なものになりつつある。日本の多くの大学図書館がラーニング・コモンズに取り組んでいるのはこうした背景がある。教育改革や大学教育の質保証の視点からあらためてラーニング・コモンズに注目していることも大きな要因である。
日本のラーニング・コモンズのモデルは北米である。論文執筆支援や学習支援に蓄積された歴史をもち,また大学図書館の位置づけと専門職であるライブラリアンの処遇において日本とはまだ懸隔があるといわれている。本書は北米の大学図書館におけるラーニング・コモンズに関する研究文献を集成し翻訳したもので,ラーニング・コモンズの名称と場を借りた日本の先行事例研究である。
10編の文献は,ラーニング・コモンズが空間の提供ではないこと,図書館機能の再構築であること,大学図書館の将来像を語っていることでは共通している。あわせて日本のラーニング・コモンズの調査・分析(30大学34施設)――コンピュータの利用とグループ学習の場を基本機能としている――は参考になる。
大学図書館関係者はもちろんだが,大学教育にかかわるすべての人に参照して欲しい本だ。
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