501小繋事件裁判資料集(DVD版全14枚別冊1)

横浜シンポで報告した早坂啓造さん――ドキュメンタリー映画「弁護士 布施辰治」にクレジットが出てくる――から出来たてのパンフレット(推薦:戒能通厚・室田武・山泉進)を頂戴していた。小繋(こつなぎ)事件とは,岩手県二戸郡一戸町字小繋山の入会権をめぐって地元農民が入会権確認・妨害排除請求訴訟を起こしたことから始まった(1917年)。1966年の最高裁での上告棄却まで半世紀にわたる農民の裁判を通じた闘いであった。
学生時代に読んだことがある,戒能通孝著『小繋事件――三代にわたる入会権紛争――』(岩波新書,1964年,[asin:B000JAH162])のなかで戒能はこう書いている。「自分の手で自分の権利をまもろうとしている農民に救いがあるか否か,その農民が山の主人になれ,自分で山の開発ができるか否かをためしている事件である。事件は小さい。しかしその裾は大きい。小繋で農民が勝つことは,次の段階として農民が手足とともに頭を使う生産の主人となることにつながっているのである。東北の一寒村で起こっている小繋事件,小さくはあるけれども,私はその中に日本の未来を考えさせれているのである」(手元にないので,戒能通厚(通孝の息子)の解説から孫引き)。
農民の闘争を支援するために村に定住し,この事件の弁護のために大学教授をやめ弁護士となったのが戒能の弟子・藤本正利である。小繋事件は農民による土地の共同利用を認めない裁判結果となったが,コモンズ論の観点から現代的関心を集めている。
「事件のその後の現在の小繋では,勝訴した地主の所有権は遊休化したままであり,農民の生活のための小繋山での生産活動は,細々ながら継続している」(戒能通厚)という。
三鷹事件についても裁判資料がDVD版(2010年1月刊,[isbn:9784835059495])として刊行されていることを知った(パンフレットpdf版→http://www.fujishuppan.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2011/11/mitakajiken.pdf)。