書誌情報:高麗博物館(発売=総和社),230頁,本体価格1,600円,2011年6月25日発行
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高麗博物館は「布施辰治――朝鮮人民衆と共に生きた人権弁護士――」展を開催した(2007年8月8日〜10月21日)。これにあわせた講演会(西新宿協会,2007年8月11日)の大石と高の講演録(大石「布施辰治の生涯と朝鮮」,高「布施辰治と在日朝鮮人の私」),さらに李熒娘「布施辰治と在日朝鮮人――解放後を中心に――」と李圭洙「布施辰治の韓国認識」の二論考が収められている。
大石と高の講演はすでに取り上げた『弁護士布施辰治』に昇華されているし,『闇を喰む』を前提に敷衍したものである。また両李稿は大石本に消化・吸収されている。高の講演録によれば,高と布施との邂逅は新宿ニコヨン事件だけでなく,朝連接収事件の際の衝突で逮捕された時にもあったという。朝鮮語もできない,知り合いもいない高に共同謀議の首謀者になりえないというのが布施の論述だった。
大石の感想がいい。布施はたしかに監獄にやってきて高の肩を抱いて外に出て行き,監獄の闇から救った。高は「実はすでに,連行していくトラックの前に飛び出して行ったおじさんやおばさん,名もない貧しい仲間たちによって,人としての無明の闇から救われていた」,高が「自分自身をみんなのなかの一人であると実感した瞬間に救われていた」(170ページ)。高のあの『闇』も長い講演録もこの一点に収斂しているかのようだ。
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- 東アジア最古の縄文期埋葬犬の骨不明と「失敗史」(三論)→https://akamac.hatenablog.com/entry/20091024/1256395070
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