441池内紀著『富の王国 ロスチャイルド』

書誌情報:東洋経済新報社,245頁,本体価格1,800円,2008年12月4日発行

富の王国 ロスチャイルド

富の王国 ロスチャイルド

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21世紀の現在でもロスチャイルドはロンドンに銀行と投資会社,パリに銀行と金融会社,ジュネーブに金融会社,チューリヒに銀行を持っていて,ロスチャイルドの世界戦略の中心になっている。200年前の一介の金貸しとしてフランクフルトのユダヤ街の小さな店から始まったロスチャイルドの隆盛は,広瀬隆『赤い楯』(単行本1991年,文庫版96年asin:4087483827asin:4087483835asin:4087485544asin:4087485552)で執拗に追究されたように同族経営・同族結婚を武器に7代目の現在でも世界に君臨し,ユダヤ人陰謀説の矢面に立ってもいる。
ユダヤ博物館(元ロスチャイルド別邸),ロートシルト名のワイン,ロスチャイルド家と親しかったハインリッヒ・ハイネ,サン・シモニスト銀行との競合,福祉の「ほどこし屋」,フランスにおける社会主義の実験との関わり,金価格決定への関与などいくつかのエピソードを織り交ぜ,創業から現在までのロスチャイルドを追い,エッセー風にまとめている。
広瀬本ほどの体系性はないが,「ひそかに,めだたず,ひっそり」を処世訓に,「最新に調査して,大胆に投資する」ロスチャイルドの姿を描いている。
邸宅や城,日常品,美術品やらロスチャイルド家所有に起源をもつ「公共物」(=国家の収奪)がいかに多いか。ロスチャイルド家がいかに大きな蓄財をなしたかを知ることができる。
ロスチャイルド一族が血縁結婚(今はやめたという),高等教育,ユダヤ性の厳守,マスコミの利用を脈々たる伝統にしつつ「閨閥資本主義」を推し進め富の王国を築いてきたことは,まぎれもない事実だ。閨閥追究の徹底性では広瀬本に軍配を上げる。