書誌情報:ナカニシヤ出版,viii+254頁,本体価格2,300円,2012年3月30日発行
- 作者: 木野茂
- 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版
- 発売日: 2012/03/18
- メディア: 単行本
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評者の学生時代の FD と言えば,フォーク・ダンスだった。いま FD と言えば,ファカルティ・ディベロプメントであり,授業改善のみならず,広くカリキュラムや教育システム,教員の資質向上までも意味する言葉である。2008年度からは FD の実施が義務化され,好むと好まざるとにかかわらず大学が取り組まなければならない教育活動になった。
欧米で始まって40年,日本に紹介されて20年のフォーク・ダンスいやファカルティ・ディベロプメントは大学教職員の取組から学生の参画による FD に展開しつつある。大学教育の改革を目指す視点からは60年代の学生運動の延長線上にある。少子化による学生数の減少と大学のユニバーサル化を背景としていることでは今日的課題に対応した取組といえる。
本書はここ数年学生による FD 活動から「学生とともに作る」大学教育改革の一端を紹介している。立命館大学は「教育開発推進機構と教育開発支援課が組織」,岡山大学は「教育開発センターの FD 部門が組織」,法政大学は「社会学部 FD 委員会の教員,社会学部事務課の職員と三位一体で活動」,大阪大学は「大学教育実践センターがチームを組織」,追手門学院大学は「大学付属の教育研究所が学生 FD スタッフを組織」,京都文教大学は「組織の属さない教員 (F)・職員 (S)・学生 (S) 有志による草の根的プロジェクト」,愛知教育大学は「大学教育・教員養成開発センターの FD・学生支援部門が組織」している。このように学生 FD は,学生によるとしながら大学による支援(推薦方式,公募方式,両方式の併用のちがいはあれ)を最大の特徴としている。
アクティブ・ラーニング,グループ学習,双方向型授業なども FD 活動のなかで注目されてきた学びの方法であり,「学生主体」「学生視点」の教育改革は定着したといっていいだろう。大学の教育改革の方向と方法論はけっしてまちがってはいないのだが,基礎となる自学自習や読書などとの連携が薄まってしまっているのが気になる。FD は学生主体であろうとなかろうと学びのすべてではない。
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