書誌情報:中公新書ラクレ(329),248頁,本体価格740円,2009年9月10日発行
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5万3,000人はいるという博士の非正規雇用者。著者の高学歴ワーキングプアの問題摘出と文教政策および大学への問題提起には大いに賛同する。受け皿への施策なしに大量にドクターを生み出した政策や非常勤講師に多くを負う大学の実態は著者の指摘するとおりだ。
ノラ博士に「「世のため人のため」に研究し続ける姿」(65ページ)を求めながら,サバイバル・テクニックや裏技まで駆使してなんとか大学に職を得ようよというのは,それだけ厳しい現実があるからと理解しよう。
「金を獲ってきてくれる優秀な兵隊,これこそ大学がいま,求めてやまない人材だ(ただし弱小私大や地方国公立はこの限りではない)」(114ページ),「全国にある約750校の大学のなかで,最高に優秀な人間(新人)が欲しいと願っているところは,(中略)ごく一部」(129ページ),「地方国公立は(公募へのトライを:引用者注)狙う価値大」(131ページ)などを鵜呑みにしたノラ博士はどこも採りたくないだろう。
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