書誌情報:祥伝社新書(339),192頁,本体価格780円,2013年10月10日発行

- 作者:安田賢治
- 発売日: 2013/10/02
- メディア: 新書
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来春入学を目指す受験生や保護者向けの大学案内と見た。大学数782校(国公立176校,私立606校),浪人生は全盛期の7分の1(56,000人,全受験生のたった8.5%),大学進学者は2人に1人,4年制大学はこの10年で1.5倍(短大は3分の1に),定員割れの私立大学は47%,看護学科は9大学から180大学に激増など,全入時代に突入した大学事情を書いている。
高校や大学関係者には既知の事柄も受験生や保護者にとっては新しい情報だろう。「笑うに笑えない大学の惨状」というタイトルが,大学を中心とした情報提供をしている会社の常務取締役,情報調査・編集部ゼネラルマネージャーにして私立学校のコンサルティングをしている著者の思いだとすれば,笑うに笑えない。
入試,学部・学科の人気,学生支援・就職支援の内容は大学進学状況の変化に対応した大学の涙ぐましくも生き残りをかけた競争そのものである。私立大学全体の9%の大学で7割の志願者を集めている。その9%以外の地方大学のコンサルティングを依頼されたら著者はどうアドバイスするのだろうか。学費免除の特待生で駅伝の強豪校にする,がどうやら著者の見立てのように読んだ。
情報公開度や非常勤講師依存度の実態,奨学金・授業料免除,教育の向上を目指すFD・SD,教育・研究の競争的環境,高等教育政策との関連など著者が触れていない大学の実情がある。「大学の惨状」という否定的な響きからは山椒は小粒でもぴりりと辛い大学の存在が後景に退いてしまっている。
大学願書を実際に書いているのは大半が母親というから(144ページ),「笑うに笑えない受験生の惨状」というべきである。
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