657読売新聞教育取材班『大学の実力2012』

書誌情報:中央公論新社,277頁,本体価格1,500円,2011年9月25日発行

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2008年から楽しみにしている「大学の実力」調査の書籍版である。一覧表は毎年7月の朝刊で掲載されている。調査への回答大学は499→529→592→623(回答率85%)と年々増えている。それでも15%の大学が未回答には驚く。調査テーマは,「FD(組織的な教育力向上)」→「学生支援」→「就職に強い大学とは?」ときて,今回は「コミュニケーション能力の育成」である。
読売調査の特徴は,「学生数/定員」,「教員数,職員数」,「入試方法別入学者」,「退学率(4年間または6年間,入学から1年間の退学者の割合」,「卒業率」,「補習(入学前,新入生)」・「日本語の学び直し」・「英語の学び直し」・「数学の必修化」・「授業形態」・「同窓会の就職支援」・「父母への成績通知」,「TOEIC」,「クラス人数」,「副専攻」,「寮の定員」,「総合自己評価」と多岐にわたる。学部別回答一覧では,「卒業論文」,「卒業者」,「就職者」,「進学者」の有無および数字が載っている(わが愛媛大学法文学部の「卒業論文」は空欄のままだ。調査票に記入した記憶があるのだが?)。「どんなに工夫しても,ランキングには興味本位に読まれがちな欠点があり」(4ページ),逆にこの「一覧表」はたしかに「かなり読みにくい」(同上)。かねてから指摘してきた「入試方法別入学者」を公表していない大学がどこか一発でわかる。「AO」・「指定校」入学者が空欄の大学もどこかわかる。「退学率」の公表は読売調査が契機だった。
文章編は,大学を選ぶ心構え,入試方法,キャンパスライフ,学生支援,専門選択など「大学とはどんなところか」をテーマにしている。一覧表の解説にあたる項目もある。
本書は「かなり読みにくい」一覧表にこそ意味がある。受験生向けの大学選びのための記事と情報は大学関係者にとっても十分使える。