493『IDE現代の高等教育』第522号(2010年7月号)

IDE大学協会発行『IDE現代の高等教育』第522号,2010年7月号,の特集「大学と情報公開」はタイムリーな企画である。
執筆者は,国立大学財務経営センター,読売「大学の実力」関係者,朝日新聞出版『大学ランキング』編集者,日本私立大学連盟広報委員会委員長,会計学専門家,欧米の大学情報に詳しい専門家,文科省高等教育局大学振興課である。概ね大学の教育や財務などの公開に肯定的だ。
入学者数と退学率の公表について,日本私立大学連盟広報委員会委員長が慎重論を弁じているのが際立っている。朝日新聞出版『大学ランキング』編集者が,「先日,私立大学協会広報委員長から,情報公開のありようについて,「大学にとってメリットにならない情報を,なぜ公表しなければならないのか」と問われてしまった。たいへん悲しかった」(22ページ)と書き残している。評者もたいへん悲しいと思う。
「大学にとってのマイナス情報も,大学の公共性を考慮すると結局は隠すことはできない。隠せないならば,隠さない方がよい」(清成,16ページ)はもっともな言である。

執筆者 タイトル
絹川正吉 (巻頭言)大学の情報公開について思うこと
金子元久 情報公開――質保証の新段階――
清成忠男 「大学の実力」調査と情報公開
林哲夫 ランキングと情報公開
安藏伸治 私立大学の情報公開
藤田幸男 私立大学と事業報告書
小林雅之 アメリカの大学情報の公開
舘 昭 「国際標準」からみた日本の大学統計情報の問題点――ISCED と学校基本調査との比較から――
石橋 晶 情報公開論議と大学