107読売新聞<大学の実力――「教育力向上への取り組み」調査――>

20日(日)と21日(月)の2日にわたって,読売新聞が実施した調査の詳細が掲載されている。20日(日)は東日本編,21日(月)は西日本編だった。それぞれ4面にわたる特集だ。大学院だけの大学を除く国内の全大学725校を対象に実施し,499校が回答したとある。68.8%の回答率はけっして高くない。回答しなかった大学は一覧にないから,特定することができる。
今回の調査は,学生数,専任教員数といった基礎データだけでなく,標準年限卒業率,退学率,学習支援策,FD(Faculty Developmentの略で,教育力向上への組織的取り組みを指す),学生評価の実施,補講率,教育成果の確認,教師力表彰制度,そして総合自己評価といった多様な項目にわたっている。大学の機能の2本柱である研究と教育のうち,教育に関する総合的評価の調査として多分初めてのものではないだろうか。わが愛媛大学については「総合自己評価」が「A」とのことだ。
西日本編中に愛媛大学を評価する記事(記事では「大学」が省略。引用では「大学」を付記。)があった。勤務大学の高評価は率直にうれしい。

自由記述欄に書いてもらった「FDに関する取り組みでモデルにしている,または参考にしている大学」と「教育力向上への取り組みで注目,評価している大学」で,「FDモデル」の西日本1位は愛媛大学。16大学が「授業コンサルタント」や「多彩な実践」を挙げた。次いで「専任教員を配置した組織的な活動」の立命館大学,「関西地区FDの拠点」の京都大学が続く。(改行)「教育力向上」では,金沢工業大学が群を抜き,34校が名を挙げ1位。FD取り組み1位の山形大学愛媛大学の支持が東と西にそれぞれ遍在していたのに対し,金沢工業大学は”全国区”。「教職協働による徹底した学生指導体制」「学生一人ひとりを大切にフォロー」が高く評価された。愛媛大学は「広い視野に立った教育改善」が支持された。

    • 教育力向上への取り組みで注目
順位 大学名 校数
1 金沢工業大学 34
2 愛媛大学立命館大学 10
4 名古屋大学 8
5 同志社大学広島大学 5
7 京都大学関西国際大学 4
9 岡山大学流通科学大学大同工業大学 2
    • FD取り組みのモデル
順位 大学名 校数
1 愛媛大学 16
2 立命館大学 15
3 京都大学 14
4 名古屋大学 11
5 金沢工業大学 10
6 同志社大学 8
7 山口大学 4
8 大同工業大学 3
9 岡山大学名城大学関西国際大学流通科学大学神戸大学 2

なお,愛媛大学については,左の「akamacのアンテナ」の「佐藤浩章=獅子丸(ファカルティ・ディベロッパー日記)」(http://blog.livedoor.jp/sandy_sandy/)参照。「授業コンサルタント」や「多彩な実践」,「広い視野に立った教育改善」の先頭に立っている同僚だ。

(追記2008年7月22日)
20日掲載の東日本編についても下記に引用しておこう。

自由記述欄では,「FDに関する取り組みでモデルにしている,または参考にしている大学」と「教育力向上への取り組みで注目,評価している大学」を書き込んでもらった。(改行)東日本ので「FDモデル」1位は山形大学。14大学が「参考にしている」。教員同士で授業を”診る”「授業改善クリニック」などの先駆的な取り組みや,東日本の大学をつないだFDネットワーク「つばさ」をつくり,蓄積したノウハウを公開する姿勢が評価されたようだ。立教大学は「全学的な取り組み」,北海道大学は「合宿型研修」が注目を集めた。(改行)実際の「教育力向上への取り組み」では「FDモデル」で5位だった国際基督教大学ICU)が1位。「英語教育」や「教養教育の重視」がその理由。山形大学はここでも「他大学との連携」が評価され,北海道大学は「先駆的な取り組み」,桜美林大学は「教職員共同での取り組み」が挙がった。

    • 教育力向上への取り組みで注目
順位 大学名 校数
1 国際基督教大学 10
2 山形大学 6
3 北海道大学桜美林大学 4
5 東京大学新潟大学 3
7 武蔵大学青山学院大学立教大学 2
    • FD取り組みのモデル
順位 大学名 校数
1 山形大学 14
2 立教大学 6
3 北海道大学 5
4 法政大学 4
5 国際基督教大学 3
6 東海大学玉川大学 2