今日最終日となった「イタリア美術とナポレオン展」(愛媛県美術館,2008年6月4日〜7月7日)を昨日鑑賞してきた。フランス領コルシカ島にあるアジャクシ市立フェッシュ美術館の巡回展(最初の本格的な海外展という)である。美術館の名前は,ナポレオン(1世)の母方の叔父にあたるフェッシュ枢機卿にちなむ。彼は絵画,彫刻,宝飾品,典礼装飾品など1,000点を遺言でアジャクシオ市に寄贈した。史上最大級の個人コレクションといわれ,1839年枢機卿が死亡した時の目録には16,000点の絵画があったという。現在メトロポリタン美術館蔵のジョルジョーネ「羊飼いの礼拝」などもその一部だった。
今回の展示には特別出品として,ボッティチェッリ「聖母子と天使」とベッリーニ「聖母子」の2点があった。15世紀の初期ルネサンス絵画としてさすがに異彩を放っていた。あとは時代が下がって,17世紀の宗教画,世俗画,18世紀のイタリア絵画と続き,フェッシュ枢機卿由来のナポレオン関係コレクションの一部がその内容だ。このなかでは,偶像崇拝が禁じられたプロテスタント諸国で発展した世俗画が目を引いた。ガスパール・ファン・ウィッテル「サンタンジェロ城の見えるローマの景観」(17世紀末),フェリクス・ジーム「コンスタンティノープルの景観」,同「ヴェネツィアの景観」(いずれも19世紀中頃)のような「都市景観画」は,前者の構図と後者の光の描写が特徴だ。
アントニオ・カノーヴァ「ジョゼフ・フェッシュ枢機卿像」(19世紀初め)は新古典主義彫刻の代表作だそうだが,なかなか見事であることはよくわかった。フランソワ・ジェラール「戴冠式のナポレオン1世」(同)は,1804年12月2日のナポレオン1世の戴冠式の様子を伝承しており,金の月桂冠,エメラルドの指輪,鷲を戴いた杖,剣,さらには宝珠と正義の手などが忠実に描かれている。これらのレガリア(帝位の標識)は王政復古期に破壊されてしまったという。
ボナパルト家系図や画家たちの年表も掲載されており,資料としても使える(図録は2,400円)。
タイトル | 執筆者 |
華麗なるフェッシュ枢機卿コレクション | フィリップ・コスタマニャ |
フェッシュ美術館のイタリア絵画 | 石鍋真澄 |
フェッシュ宮の歴史 | グザヴィエ・トロジャーニ |
カタログ | - |
第1章 | 光と闇のドラマ――17世紀宗教画の世界 |
第2章 | 日常の世界をみつめて――17世紀世俗画の世界 |
第3章 | 軽やかに流麗に――18世紀イタリア絵画の世界 |
第4章 | ナポレオンとボナパルト一族 |
- | フェッシュ美術館所蔵のコルシカ風景画家 |
- | ナポレオン関連資料 |
ボナパルト家系図 | - |
年表 | - |
関連地図 | - |
作品リスト | - |