書誌情報:朝日出版社,127頁,本体価格1,600円,2010年3月1日発行
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ちょうど,ピカソの絵 Nu au Plateau de Sculpteur (Nude, Green Leaves and Bust)「ヌード,観葉植物と胸像」 が 106.4 million dollars(約100億円)で落札されたことを知った(時事ドットコム→http://www.jiji.com/jc/zc?k=201005/2010050500136&rel=j&g=afp)。
本書は19世紀の印象派までが対象だからピカソなど現代絵画の展開に踏み込んでいない。国内で開かれる海外美術館展には宗教画が含まれていることが多い。かつて Staatliche Kunstsammlungen Dresden で見た宗教画の大きさに圧倒され絵の主題はまったく記憶に残っていない。それもこれも宗教画の知識が皆無だったからだろう。
宗教画は聖書の物語を伝える「さし絵」だ。また,聖堂の祭壇画,壁画,彫刻,レリーフも「貧者の聖書」である。宗教画家は古典文学,キリスト教,人体骨格,遠近法などの知識を必要とした。鑑賞するわれわれもモーセとイスラエル,キリスト受難の話を知っていればわかりやすいというわけだ。19世紀の印象派が誕生するまでの西洋絵画(彫刻なども含む)の「ひみつ」はこの聖書理解である。
「ひみつ」のふたつめは,物語画(聖書,英雄伝,ギリシャ・ローマ神話,古典文学)→肖像画→風俗画→風景画・静物画というえの格付けである。聖から俗と発展する西洋絵画の歴史と重なっている。
偶像崇拝を禁じた旧約聖書のモーセ第2戒にしたがい,人が神を想起するためのイコン(人にして人にあらず)として表現された神・キリスト・聖母・聖人たち,カトリックとプロテスタントにおける絵画の取り扱いの相違,新婚夫婦の寝室を飾ったヴィーナスの絵など小さな本に西洋絵画の「ひみつ」の入口が用意されている。
漢字の多くにはルビが振られ,若い読者を想定している。名作絵画50点を収録し,わかりやすい西洋絵画入門書になっている。
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- 出口保夫・小林章夫・齊藤貴子編『21世紀 イギリス文化を知る事典』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20090505/1241518201
- 《一言自省録》書いてからその後一度も開いていない。
- 出口保夫・小林章夫・齊藤貴子編『21世紀 イギリス文化を知る事典』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20090505/1241518201
- 2年前のエントリー
- 的場昭弘著『超訳『資本論』』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20080505/1209993407
- 《一言自省録》当時フランスにいた著者からコメントをもらったのだった。
- 的場昭弘著『超訳『資本論』』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20080505/1209993407
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- おさぼり