314出口保夫・小林章夫・齊藤貴子編『21世紀 イギリス文化を知る事典』

書誌情報:東京書籍,8+830頁,本体価格9,500円,2009年4月16日発行

21世紀 イギリス文化を知る事典

21世紀 イギリス文化を知る事典

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辞典・事典・字典はよく集める。以前誰かのエッセイで,よく使う辞書は背表紙を下に机におき,そのまま引き出すとすぐ開くことができると知り,実践したことがある。結局机の上には,電話機やらパソコンが占領することになり,評者の場合は途中で挫折した。本書も一応辞書類を納めた本棚の一角を占めることになるだろう。
イギリスの自然・文化・生活全般を7つの章にわけ,大項目と小項目で解説している。エッセイ風,読み物風事典である。
編者(出口)が「はしがき」で書いている。インターネットの普及で紙に印刷した文化事典や百科事典は不要ではないかという意見にたいして,「しかし,それらの情報や知識は,しばしば浅薄であり,ましてやなんらかの体系も備えていなければ,個性的表現も見られない」(2ページ)。インターネットと紙の両刀使いとしては――たとえ徳仁親王の「巻頭特別寄稿」があろうとなかろうと――この意見は「極論」だと思うが,本書を編んだ自負として理解しておこう。
東京書籍に詳細な目次があるのでそれを下に貼り付けておく(→http://www5.tokyo-shoseki-ptg.co.jp/tosho_new/book/index.htmlの「辞典・事典」)。

はしがき
執筆者一覧
凡例
巻頭特別寄稿 18世紀テムズ川の水運について
第1章 イギリスとは何か――その自然と歴史、文化
   1 イギリスの地勢・風土と四季
   2 イングランドの歴史と文化
   3 スコットランド――北の王国の歩み
   4 ウェールズ――古代ブリテンの残照
   5 アイルランド――もうひとつの島国
   6 首都ロンドンのたどってきた道
   7 個性溢れる地方都市
   8 イギリスの街道
     マイ・フェア・ロンドン
     グラスゴーの新しい顔
     湖水地方の文学とナショナル・トラスト
     イギリスのウォーキング文化
第2章 イギリス人の成り立ち
   1 イギリス人をつくり上げたもの――諸民族の交流
   2 英語の変遷
   3 イギリス宗教史――キリスト教をめぐる物語
   4 王室から庶民まで――階級社会イギリス
   5 イギリス的思想とは何か
   6 イギリスの大聖堂を巡る
   7 イギリスの城と城郭都市
   8 壮麗なイギリス王室の宮殿
   9 イギリスの甲冑と武器――メイド・イン・イングランドを探る
     イギリス人のユーモア
     イギリスの紋章と勲章
     大英博覧会
     快適なロンドンの公園と広場
第3章 現代イギリス社会を知る
   1 政治を動かすのは誰か
   2 成文憲法のない国――イギリスの法制度
   3 イギリス外交の特色
   4 シティの果たす役割――金融と経済の中心
   5 治安を守る人々――コンスタブル、治安判事、警察
   6 イギリスの新聞と放送
   7 エネルギー革命と交通
   8 イギリスの医学と医療
   9 イギリスの福祉――福祉国家の成立と変容
   10 イギリス連邦と移民
   11 EUとイギリス
     007の国の情報部
     ITビジネスとニュー・リッチ
     懐かしいロンドン二階バスと黒タクシー
第4章 イギリスに暮らす
   1 住まいが語るイギリス史
   2 衣服でたどるイギリス史
   3 イギリスの家具文化
   4 料理と食事とマナーのイギリスらしさ
   5 アルコール文化とノン・アルコール文化
   6 イギリスの庭園変遷史
   7 カントリー・ハウス逍遙
   8 英国紅茶の話
     イギリスの名園を巡る
     イギリス陶磁器の魅力
     ウィスキーの故郷
     ハーブとポプリ
     イギリスのブランド今むかし
     王室御用達の逸品たち
     イギリスの通貨
     イギリスの切手
第5章 イギリスで学ぶ
   1 初等・中等教育の今昔――キリスト教と社会階級と教育の関わり
   2 拡大する大学教育
   3 成人教育の普及
   4 イギリスの専門家養成――RADAの俳優教育を中心に
   5 職人養成の伝統
     グランド・ツアー
     オックスフォードの学寮生活
     パブリック・スクールとは何か
     ケルト諸語の復活
     市民のための公共図書館
     書物はどのようにして生まれたか
第6章 イギリスで楽しむ
   1 イギリスの演劇
   2 イギリス美術の魅力
   3 イギリス音楽――歴史をたどる
   4 スポーツ大国イギリス
   5 大英博物館とパルテノン・マーブル
   6 行ってみたいロンドンの美術館
   7 推理小説とイギリス人
     ブリティッシュ・ロック&ポップ
     イギリス・アイルランド映画
     水彩はいかにして「イギリスの芸術」となったか
     シャーロック・ホームズが覗くイギリスの舞台裏
     賭けを楽しむ
     パントマイムとは何か
     アンティーク趣味
     釣りとイギリス人
     ダービー観戦記
第7章 イギリス文化の古層と現代
   1 ケルトの文化とその復活
   2 民俗行事と風習――古層と現代
   3 アーサー王伝説――中世から現代へ
   4 バラッドが伝える世界
   5 児童文学の世界
   6 ファンタジー文学
   7 ジャパニズムの影響
   8 現代イギリス小説と文学賞
   9 子どもたちの遊び
     現代のイギリス桂冠詩人
     イギリスの民謡と日本の唱歌
     イギリス社会とセクシュアリティ
     煙突掃除人の話
巻末 イギリスと日本――その交流の歴史から
付録
  関連地図
  イギリスのカウンティ(州)
  歴代国王一覧
  年表
  参考文献
  図版一覧
  人名索引
  事項索引