656西森マリー著『レッド・ステイツの真実――アメリカの知られざる実像に迫る――』

書誌情報:研究社,281頁,本体価格1,500円,2011年8月1日発行

レッド・ステイツの真実 ――アメリカの知られざる実像に迫る

レッド・ステイツの真実 ――アメリカの知られざる実像に迫る

  • 作者:西森 マリー
  • 発売日: 2011/07/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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アメリカの大統領選挙の予備選挙の際,シンボルカラーにしたがって民主党候補が勝った州を青に,共和党候補が勝った州を赤に塗り分ける。非都会型・農業地帯の州が赤で埋まり,これらがレッド・ステイツというわけだ。共和党の支持者の多くが共和党の経済政策の被害者になるにもかかわらず共和党を支持するのはなぜか。保守的なキリスト教徒だからである。
レッド・ステイツのアメリカ人がどのように聖書を解釈して共和党支持の拠り所にしているかを解説した本書は意外に読み応えがある。創世記,天地創造説,忠誠の誓い,中絶,同性愛,経済観,税金,福祉,銃所持,死刑,悪魔論,終末論など聖書の解釈とレッド・ステイターたちのイデオロギーを紹介しており,アメリカ人のメンタリティー理解の一助になる。
聖書の解釈とはあの「ルビンの盃」のようにふたりの女性の顔が見えるか,盃が見えるかの違いのようでもあることに気づかされる。各章のはじめに「Public Opinion Polls」として各種のアンケート調査を置いていて一工夫がある。保守派キリスト教徒の法律学校がいくつかあって(リージェント大学,リバティ大学,アヴェ・マリア大学など),奨学金を出して中絶反対派の判事や弁護士を育成しているというのは評者にとっては初耳だった。日本では考えられない宗教=政治の現実だ。
保守派キリスト教徒には「目には目を,歯には歯を,聖書には聖書を」と,聖書をもってディベートする方法を,リベラル派には心を開き首尾一貫した態度を,それぞれ期待している。「二極対立の現状を少しでも緩和するため」の処方箋は,キリスト教原理主義者見て我が振り直せと教えられた。