159堤未果著『ルポ 貧困大国アメリカ』

書誌情報:岩波新書(1112),iii+207頁,本体価格700円,2008年1月22日

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

  • -

著者が描くアメリカの「暴走型市場原理システム」は,格差を人為的に作り出すことで,民営化された戦争(イラクは戦争請負会社にとっては「ゴールド・ラッシュ」!)を可能にしていることを報告している。期せずして,日本にそくして二宮厚美が展望した憲法カナリア憲法25条+9条」が浮上しているといえよう(『憲法25条+9条の新福祉国家かもがわ出版,2005年8月,asin:4876998868)。本書の基本的主張である,新自由主義(「経済重視の民主主義」)に代わる「いのちをものさしにした民主主義」がこれにあたるだろう。
民営化は万能ではないことをアメリカのルポという形で提示したところに本書の新しさがある。参考文献や資料の参照はないものの,確かな理解をうかがわせる文章だ。本山美彦『民営化される戦争――21世紀の民族紛争と企業――』(ナカニシヤ出版,2004年10月,asin:4888489130)なども読み込んだに違いない。